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映画・本の感想など


by muyokunohoshi
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ベリッシマ

ベリッシマ_f0032055_11214825.jpg








「私と父親にはすばらしい子よ。すばらしい子だから…手離さないわ。」

ルキーノ・ヴィスコンティ監督。
タイトルの「ベリッシマ」とはイタリア語で「もっとも美しい女性」「美少女」という意味のようです。

自分の幼い娘を映画子役にさせようと母親が奮闘するコメディ映画です。
母親は娘をオーディションに合格させようと、演技の講師をつかせたり、バレエを習わせたりします。しかし、娘はそれについていけず泣いてしまい母親はやきもき。
どうしても合格させたい一心で、最後には夫に内緒で新居のお金を映画関係者に渡しコネ代に使ってしまいます。

そんな母親役を演じるのはアンナ・マニャーニ。
物怖じしなし言動の母親役にぴったりでした。
コネをお願いした映画関係者の男性から川のほとりで言い寄られるのですが、母親はその男性を笑い飛ばします。いくらオーディションに躍起になっていても、「自分には家族がいる」という揺るがない母親の姿は、見ていて爽快でした。
またラストシーンで、ベッドで嘆く妻の靴を、夫が優しく脱がしてあげるシーンも良かったです。

人気子役の芦田愛菜ちゃんのように輝く一等星の星もあれば、その裏にはこの映画のように幾戦の親子のドラマがあり、小さな星として淡く光っているんでしょう。そう思うと感慨深いものがあります。
# by muyokunohoshi | 2011-11-28 11:40 | 映画

お母さんに会いたい

お母さんに会いたい_f0032055_2295280.jpg










久しぶりにブログを書きます。

なんだかこの間、色々あった。

大学では部活で映画製作の日々。
最高に楽しかった。

でも四回生は卒論・実習・資格試験。映画は撮れず。

就活はことごとくダメで、映像系の仕事をあきらめ福祉系へ方向性を転換。
運良く内定もらえた。大学も無事卒業。

去年春から病院で仕事をするようになって
新しい土地で、生まれてはじめて一人暮らしを始めて・・・。

生まれてはじめて彼氏もできた。


でも、一番大きいことは
二年前に母を亡くしたこと。

癌だった。

母が亡くなって感じたことは 「私の人生の第一章が終わった」 ということ。
まるで世界が変わったのだ。


今回、この本はたまたま図書館で見つけた。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」の『既婚女性版』に投稿された文章を、一冊の本にまとめたものである。

最初から終わりまで涙を流しながら読んだ。皆、自分と同じ悲しみを感じていたのだ…。書込みをした女性の大半は、20代から30代くらいだろうか。一度悲しみが落ち着いても、自分が子どもを産み育てる立場になった時にまた母を思い出す人が多いように感じた。私自身、今、ウエディングドレスを母に見せられない悔しさ、そして出産の時に母に頼れない不安がある。

お母さんが死んですぐは、友達が母親の話をすると本当に羨ましかった。何も感謝してない様子だと「もっと母親に感謝しろ!」と心の中で叫んだ。

自分が母を失くして感じた数々の気持ちを、他の人も同様に感じていたのだとわかると、「私だけではない」と安心した。前へ進もうとしている人の文章を読むと、「私も進まねば」と思えた。

久々に「良い本に出会えた」と思った。

もしかしたら女性の方がより共感出来るかもしれない。
もしあなた自身が(もしくはあなたの身近な人が)母親を失くした時、是非この本を読んでみて欲しい。
# by muyokunohoshi | 2011-11-09 22:11 |

燃えるスカートの少女

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エイミー・ベンダー著。
半年ほど前、NHKの番組「週間ブックレビュー」でこの方の本、『わがままなやつら』が紹介されました。その時は忙しくて、どんな本なのか調べることもなかなか出来なかったのですが、インターネットで彼女のデビュー作が近所の図書館にあると知って、さっそく借りて読んでみました。それが、この『燃えるスカートの少女』。
話が独特であり訳が難しいのではと思いましたが、管啓次郎さんの訳は本当に素晴らしいです!
彼の書いたあとがきも、この素敵な本を書いた原作者の人柄がうかがえる内容で、とても良いですよ。

16の短編と特別付録からなるこの本は、読んでいる間、本当に不思議な気持ちになります。
この本の特徴は、なんといっても登場人物の設定が変わっていること!
恋人がどんどん退化していく話(『思い出す人』)や戦争から戻ってきた夫に唇がない話(『溝への忘れもの』)、父の胃に穴が開き、母が祖母を産む話(『マジパン』)、小鬼と人魚の高校生の話(『酔っ払いのミミ』)…。その他の話も、主人公に思いがけないシチュエーションがおとずれるものが多いです。

短編ひとつひとつを見ると、なんだか切ない話も多いのですが、幸せになれる話もいくつかあります。

私のお気に入りの話は、『皮なし』と『酔っ払いのミミ』です♪
『皮なし』は、ユダヤ人の女性とナチス信仰のある青年の話で、作者がユダヤ系であるということも、この話のベースになっているのがうかがえます。他の話よりも少しシリアスな感じがしますがラストシーンは感動です。さらに『酔っ払いのミミ』はなんといっても温かい感じが良いです。特に、小鬼の男の子が授業中に持ってきたビールを、前の席に座っている人魚の女の子が、髪の毛の先から吸って酔う(!)というくだりが大好きです。この話のラストも好きで、2人が地べたに寝転がり、小鬼の男の子が人魚の女の子の髪を撫でてほんわかと終わります。

まだまだ空気には冷たい風が残りますが、桜の匂いも南から近づいてきた今日この頃。
小春日和の休日は、日向ぼっこしながら、ぜひこの本を読んで欲しいです。

写真もありますが、本の表紙も素敵な絵ですよ♪
今は作者の初長編小説『私自身の見えない徴』を読んでいるところです。
この本を読み終わったら、『わがままなやつら』も読もうと、計画中です。
# by muyokunohoshi | 2009-03-10 11:49 |

世界の始まりへの旅

世界の始まりへの旅_f0032055_10312912.jpg








「遠い昔も時が経つと、また現在へ戻るのだ」

マノエル・デ・オリヴェイラ監督。
映画撮影隊の一行が休日を利用して俳優・アフォンソの故郷へと赴き、監督・マノエルは少年の頃に過ごした日々を思い巡らす。(アマゾンより)

かつて過ごした地へ赴くことによって、どんどん人間の過去に遡る不思議な感じがします。話の中で一度も会ったことのなかった甥と伯母が出会うのですが、伯母のほうは甥が故郷のポルトガル語を話せないことから自分の甥だとは信じません。しかし、そこで甥が「言葉は問題ではない。大事なのは血だ。腕の脈打つ血だ。あなたの血と同じだ。」と言ったことから、ようやく伯母はこの男が甥だと信じるようになります。
話は全体的にゆったりした感じなので途中でくだびれてしまいましたが、それは川の下流から上流を目指して一歩ずつ歩くようなもの。映画の中のさりげない一言や登場人物の想いから、 人間の根源にふと触れることが出来た気がしました。
# by muyokunohoshi | 2008-09-03 10:46 | 映画

裸足の1500マイル

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「彼らは理解すべきだ。我々は彼らのためにやっているのだと」

フィリップ・ノイス監督。
オーストラリアの先住民・アボリジニを隔離しようとする政策に従い、アボリジニと白人の混血の少女3人が家族から引き離され、英語やキリスト教など白人としての教育を受ける。家族に会いたい彼女たちは、施設を抜け出し、1500マイル(2400キロ)もの道をひたすら歩き続けた。実話をもとに、オーストラリア出身のフィリップ・ノイスが監督したヒューマンな感動作。(アマゾンより)

施設から逃げ出した3人の少女が過酷な状況の中、家を目指して歩いていきます。最後にはこの話のモデルとなった人も登場し、隔離政策が本当にあったということを改めて感じさせてくれます。白人主義の傲慢さに憤りを覚えますが、一方でアボリジニ保護局長(ケネス・ブラナー)は、自分は良心でやっているのだとあくまで自分の行動を疑いません。現在に生きる人々は過去の間違った部分を指摘出来ますが、過去の過ちは、その時代の人々にとっての法律であり正義であり信念だったのかもしれません。かつて世界が経験した戦争も、今私たちが人間至上主義の妄想にとりつかれて地球環境を考えずに生活していることも、未来の人々は同じように人間の過ちとして嘆くのだろうと思います。
# by muyokunohoshi | 2008-09-03 10:26 | 映画